介護施設に入所する理由はいろいろあります。在宅生活を送っていて、年齢が重なると物忘れや今までできていた事ができなくなったり、足が悪くなって家の中で転んでしまったり、階段や段差を上がれなくなったり、お風呂に一人で入ることが難しくなったり、一人で暮らしていくのが不安になったりと、介護施設に入所する方にはいろいろな理由があります。
高齢者施設に入所する事を、自分で納得して入ることができればいいのですが、多くの方が”娘(息子)に勝手に連れてこられた””話してくれていれば納得できたのにひどい”と職員に話される方がいます。
介護施設に入所して受け入れるまでの利用者様に変化はキューブラーロスの死の受容過程に似ているなと思う時があります。はじめは受け入れる事が難しいが最後は介護施設が終の棲家として受け入れる方が多いと感じます。キューブラーロスの死の受容過程に当てはめて振り返ってみます。
キュプラー・ロス5段階モデル
キューブラー・ロスが発表した死を迎える患者の心理5段階モデル
第1段階 否認…病気や死を否定して孤独の感情を抱く
第2段階 怒り…なぜ?と思い何事に対しても怒りが起こる
第3段階 取り引き…神や仏にどうすれば延命してもらえるか願う
第4段階 抑うつ…取引が無駄であると知り、抑うつ状態になる
第5段階 受容…衰弱が進み、自分の死を静かに受け入れる
介護施設に入所する事になった時の心理
以下の内容は入所された全員にはあてははまらないかもしれません。自宅で自立されていたけど、転倒が多い。少し物忘れがある感じのご家族が心配しされて入所されてきた方に当てはまりました。
介護施設に入所する事になった利用者様の心理をキュプラー・ロスに当てはめて考えてみました。
第1段階 否認
ご家族と一緒に入所するために荷物を持ってケアステーションに笑顔であいさつに来てくれました。ご家族が帰ったあと部屋の椅子に座ったまましばらく出てきませんでした。”ここにずっと入ると聞いていなかった少し泊まるだけと聞いていた””荷物家にまだあるからあとで取に行くんです” と介護施設に入所した事を事実として受け止めていない感じがしました。
対応方法:本人様の話を聞きどのようにご家族が本人様に伝えているのかを確認しました。
第2段階 怒り
次の日から数日経過すると、自宅に帰ることができないとわかり”勝手に施設に入れて、自分の育てた子供だけど許せない””どうして一言も言わないで施設にいれるの””家族だけど許せません””自分で荷物選んで持ってきたいものあったのに””息子は持ってきてと言ってもわからないでしょ。自分で選ばないと”と施設に連れてこられたことを怒ってらっしゃいました。ご家族は施設に入ることを説明しているのですが、本人様が忘れてしまった様でした。
対応方法:それはお辛いですねなどの声掛けをして話を聞きました。
第3段階 取り引き
”出口はどこですか。バスに乗って帰ります””息子に電話してくれませんか?”などお一人で帰る方法やご家族の連絡先をメモしたのを職員に渡され連絡をして迎えにきてもらいたいと話されていました。”私はね、杖ついているから転ぶ事もあるけどご飯だって自分で作っていたの。今だってきますよ”と話されました。
対応方法:職員全員で同じ対応ができるように統一しました。
ケアステーションからは電話できないので事務所の担当の方に伝えておきますと統一しました
第4段階 抑うつ
”こんな所にいて、死んでいくのなら今すぐ死にたい”と夕方になっても電気のついていない部屋で椅子に座っていたり布団から出てこない状態になってしまいました。”もう家に帰れないのなら死んだほうがましです”と杖で自分の体を叩いたり表情に活気がなく、話をしながら静かに涙を流されました。”夜も息子に騙されて連れてこられたと思うと悲しくて眠れなかった”と話されていました。
対応方法:話を傾聴して自分の体は大事にしてください。夜眠れないと辛いので医師に相談して眠りやすくするお薬だしてもらいましょうかと話しました。そしていつでも話を聞きますから声をかけて下さい。と声を掛けました。
第5段階 受容
”ここで生活をしていかないといけない事はわかっています。でも辛いですね”と静かに受け入れられ、リビングや廊下の長いすに座って他の入所者様と少し笑顔で話ができるようになりました。
対応方法:職員が話を聞いたり、はじめは少人数でする手先を使った物作りに誘ったりと関わらせてもらいました。
おわりに
今まで自立して生活をされていた方が、急に介護施設に入所すると言うことは生活環境が大きく変わります。わかっていて入所された方も環境の変化に驚かれる方もいますし、少しだけと言われて入所された方もどの方にとっても介護施設に入所するという事は大きな出来事だと思います。一番身近にいる看護や介護職員は本人様の話を聞いてあげる事が本人様にとって一番にできるケアなのではないでしょうか。
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